事件ファイル
探偵ケイシャと坂のウエの謎

ケイシャの記録:呪われた水平器の手がかり
「傾斜に敵対する存在」——そんなものがこの街に現れるとは思ってもいなかった。
坂の上から見下ろしたとき、見慣れぬ光がゆらめいた。
金色の液体がゆれる、あの忌々しい“水平器”。
あの道具が意味するもの、それは街の傾斜の否定だ。
ブンキョウの街は、坂でできている。
いや、坂で“語られて”いると言ったほうがいいかもしれない。
上へと歩く人の気配。下へと滑り落ちる声。
坂道には人の想いがしみ込んでいる。
そのすべてを“平ら”に戻そうとする存在。
言葉にできぬが、これは——傾斜に対する“侮辱”だ。
今回の依頼は、事件ではないのかもしれない。
だが、私は調べなければならない。なぜなら——
「この街の傾斜を守ることが、坂道探偵の務めだからだ。」

プロローグ
ブンキョウの街に、奇妙な事件が持ち込まれた。依頼人の話によれば、街のどこかに“呪われた水平器”なるものが存在するというのだ。
それは金色の液体がゆらゆらと揺れ動き、すべての傾斜を“水平”へと正してしまう不気味な道具。
美しい坂道が連なるこの街にとっては、まさに存在そのものが“災い”とも言える代物である。
依頼を受けたのは、エッジの効いた事件をこよなく愛する、坂道探偵ケイシャ。
今回の調査には、ケイシャが信頼を寄せる相棒――鋭い嗅覚をもつ黒猫・カクドも同行する。
だが、その水平器はただの遺失物でも、不審者の忘れ物でもなかった。
街の各所には、水平器にまつわる奇妙な“証言”が残されており、人々の言葉の断片は、坂道をめぐる謎の深さと、街に潜む不穏な空気を物語っていた。
ケイシャとカクドは、5つのエリアにまたがる坂の街を巡りながら、点在するヒントを手掛かりに、事件の全容を解き明かしていくのだった――。
依頼人の証言


不安げに語る依頼人の声に、ケイシャはうなずき、すぐさま現地調査へと向かった。
探索マップ:坂の街ブンキョウ

調査は、文京区に点在する5つのエリアから始まった。
それぞれのエリアには3つの坂(坂A〜C)が存在し、現場では不可思議な証言が次々と集まっていった。
証言ギャラリー:坂の上のヒントたち


ケイシャと助手は坂を登り、視点を変えながら少しずつ真相に近づいていく。
風景の中に潜む違和感。通りすがりの声。何気ない看板の一言。
断片的な証言をつなぎ合わせることで、事件の輪郭が浮かび上がっていった。
ケイシャの観察メモ
呪われた水平器——液体が揺れれば揺れるほど、傾斜の美しさが失われる。
坂の街にとって、水平とは敵。なぜ今この道具が現れたのか。
証言に共通する「視点の変化」が気になる。
坂の上・坂の下・星を見る——それぞれに意味があるはずだ。
カクドのヒゲも逆立っていた。やはり、ただの道具ではない……。
真相と結末
すべての証言をつなぎ合わせたとき、ケイシャの頭の中に一つの像が浮かび上がった。
それは、坂道の上で暮らす人々の「傾斜」への執着と、
それに対抗するかのように街に現れた「水平器」の存在が交錯する、不思議な物語。
水平器の正体は、ある人物が開発した“実験装置”であった。
急傾斜での生活に疲れ果てた者が、街のすべてを水平に戻そうとした結果生まれたものだったのだ。
だが、街の人々は語る――
「傾斜があるからこそ、この街は美しいのだ」と。
「上り坂も下り坂もあってこそ、日常は豊かになるのだ」と。
水平器は回収され、静かに封印された。
ケイシャとカクドは、再び街の傾斜を守るためにその場を後にする。
" どんなに斜に構えた人間でも、いずれ吾輩に心が傾くさ "
坂道探偵ケイシャの言葉を残して。
